才能なし!

TBS系列で毎週木曜日の19時から放送されている「プレバト!!」は、ほぼ毎週見ているお気に入りの番組です。

その中でも俳句の才能査定ランキングは、出場者の俳句を査定する俳人・夏井いつき先生の歯に衣着せぬトークやダメ出しが面白く、添削によって見事な俳句に生まれ変わる場面を見ては、少しは俳句を理解した気になっていました。

語順やリズム、季語の引き立て方やわかりやすい言葉の選び方等は、普段の仕事で文章を作成するときにも役立っており、いつかは俳句を作ってみたいとずっと思っていました。

書店で夏井先生の著書を手に取ったこともありましたが、どうせ時間がなくて続かないだろうという思いが先に立って、一歩前に踏み出すことができませんでした。

ところが昨年の夏、おそらく8月頃だったと思うのですが、あまりの暑さにソファーでぐったりしているときに、急に一句浮かんできたのです。

夏の日の午後、外から帰ってきた小さな男の子の靴下がリビングに脱ぎ捨てられている、浮かんで来たのはそんな情景です。

 「茹だる居間 吾子の靴下 点々と」

お~、なかなか良いのでは。ちゃんと季語(茹だる)も入っているし、靴下を脱ぎ散らかした子供は、どうなったのかな? 一目散に冷蔵庫に向かってアイスを食べに行ったのかな? と読む人の想像もかき立てるし、初めての作品にしては上出来なのでは、と悦に浸っていました。

この作品を世に出さないのはもったいない、ひょっとして何かに応募すれば、賞をとったりして。

これをきっかけに俳人としてデビューしたりして。

ランニングを題材にした句で有名になって俳人ランナーなんて呼ばれたりして。

と、いつものことながらどんどん妄想が膨らんでいきます。

ちょうど「第18回角川全国俳句大賞」が作品を募集しており、募集要項をみると、自由題2句1組、または自由題2句1組+題詠1句(お題は「光」)の組み合わせのどちらかで応募しなくてはいけないことがわかりました。

どうせ読むならランニングにちなんだ句を詠もう、ということで絞り出したのが次の2句です。

 「熱帯夜のラン ゴールは旭光」

真夏の日中に走るのは危険です。早朝、それもまだ暗いうちから走り始め、走り終わる頃に上ってきた旭光(朝日の光のことです)がまるでゴールテープのようであったよ、という情景を詠んだ句です。

 「水求めし夏山 無言の行脚」

夏山のトレイルランニング。もう何キロも水のない状況で走っています。エイドステーションはまだ先。下を向いて無言で前に進む様子は修行僧の行脚のようだ、という情景を詠みました。

え~、3句とも良いんじゃない。

しかも後の2句は定型の5・7・5を崩して、破調というちょっと経験者っぽい句になっているし。

大賞とったら表彰式に出席するために会社を休まなければいけないなあ。

「いや~、デビュー作で大賞をとってしまいましたよ~」って言ったらみんな驚くだろうな・・・

とパソコンで応募画面のクリックをしながら、妄想に酔いしれていました。

月日は流れ・・・応募したことなどすっかり忘れてしまっていたのですが、会社から帰ると届いていたのです。

急激に心拍数が高まり、震える手でページをめくりました。

大賞、ない。

なんとか賞、ない。

入選、ない。

冷静になって考えると、賞をとったら表彰式の連絡があるはずで、当然のことながらそんな連絡はあるはずもなく。

受賞作はどれも素晴らしくて自分の3句は足下にも及びません。

突きつけられた現実に納得はしましたが、少しだけ残念な気持ちで冊子をパラパラとめくると、「都道府県別作品集」のページがあるではないですか。

ひょっとして、と再びドキドキしながらページをめくると・・・

勿論、名前も出ていました

ありました!

★が付いていないので予選すら通過していないのですが、それでも間違いなく私の作品です。

あれっ、吾子の句は載っていないな・・・まあいいか。

俳句を作って、それが活字となって世にでるなんて。

人生何が起きるかわかりませんね。

プレバトの査定で言うところの「才能なし」だとは思いますが、私にとっては「才能あり」いや「特待生」「名人」にも匹敵する嬉しい出来事でした。

明日、夏井先生の本、買いに行こうかな・・・

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