いのち輝く未来社会
1970年、大病を患っていた私は大阪万博に行くことができませんでした。
祖父母や兄は何度か訪れており、その度に、やれスイス館が良かっただの、やれアメリカ館で何時間も並んで月の石を見ただの、体験談を聞かされました。
そんな祖父母や兄に嫉妬と羨望を感じたことは今でも覚えています。
あれから55年が経ちました。
「私は万博に縁がないのでは。今回も直前で事故や災害に見舞われ、行くことができないのでは」という縁起でもない予感は見事に外れ、無事に夢洲の会場に立つことができました。
情報収集に余念がない家内は、効率よくパビリオンをまわる順番を考えており、私はその作戦に従って的確にナビゲーションを行うという重要なミッションを託されました。
当日の作戦はこんな感じです。
① 混雑する東口からの入場を割け、JR桜島駅から出ているシャトルバスを使って西口から入場。
② 入場後、人気パビリオンに直行。
③ お昼はどのレストランも混雑するので、昼食は少し遅めの時間とし、それまでの空腹を満たすため、おにぎりとおやつを持っていく。
④ マイボトルを持っていき、都度補給する。
⑤ 入場待ちで並ぶとき用に、折り畳み式の簡易チェア持っていく。ただし、これは家内のみで、私は荷物が増えるのが嫌なので持っていきませんでした。
⑥ 事前に予約がとれたカナダ館は15時からなので、それまでは当日予約を駆使しながらまわれるところをまわる。
⑦ ウォーターショー、ドローンショーを見てお土産は最後に買う。
これに加え、「予定通りにまわれなくてもイライラしないこと」「ネットで出回っている事前評価はあくまでも参考情報であって、それが外れていてもイライラしないこと」の二つをきつく自分自身に言い聞かせました。さて、作戦はうまく行ったのでしょうか・・・
ここから先の①~⑦は上記の番号に対応したものです。
① JR舞洲駅を8時台に出発するシャトルバスを事前に予約しましたが、7時50分にバス乗り場に着いた時には既に長蛇の列ができていました。バスに乗れたのは8時20分ごろ。いきなり万博の洗礼を浴びてしまいました。
車中から大屋根リングが見えてくると、乗客一同から「おー!」と感嘆の声が上がりました。近づくにつれてその大きさを実感でき、自然にテンションが高まっていきます。
東ゲート横を通過したとき目に入ってきたのは、入場を待つ人・人・人。「やっぱ、西ゲートにしてよかった」とこの時は思っていました。
西ゲートに到着すると、東ゲートに負けず劣らずの人・人・人。列は遅々として進まず、なかなか入場できません。おまけにゲートまでは影がなく、直射日光が容赦なく降り注ぎます。帽子を被ってくればよかったと後悔しましたが、まだこの時点では「これぐらいであれば大丈夫だろう」と高をくくっていました。
② 9時30分にようやく入場。少し疲れたのは気のせいと言い聞かせ、早速イタリア館に直行しました。
正面から見る限り、さほど列は長くなかったのですが、最後尾で誘導員に聞いてみると、なんと2時間待ち。さすがは人気のパビリオンです。他のパビリオンに行くという選択肢も頭をよぎりましたが、家内と話をした結果、腰を据えて列に並ぼうということになりました。
並んでいる間も家内は情報収集に余念がありません。どこそこは待ち時間が短いとか、当日予約ができそうとか、私は言われるがままスマホを操作し、とりあえず公式アプリから17時30分にオーストラリア館を予約しました。
ちなみに、公式アプリで当日予約すると、その予約を実行しない限り別の予約はできません。今回は会場内での予約センターを利用しませんでしたが、それを使えばもう少し効率よく予約できたかもしれません。次回以降の課題です。
さて、イタリア館は前評判にたがわず見ごたえのある展示内容でした。ファルネーゼのアトラスをはじめ、本物の美術品を間近に見ることができる貴重な体験でした。


③ イタリア館入場待ちの間にどら焼きを、14時ごろにおにぎりを、夕方に会場のコンビニで買ったやきそば弁当を食べました。どのレストランも長蛇の列でしたので、パビリオンをまわることを優先するのであれば、この方法がベストではないかと思います。
とはいえ、せっかく万博に来たのにコンビニ弁当は寂しすぎます。にレストラン情報の入手も次回の課題です。
④ 水の給水スポットも随所に設置されていました。ただし、給水するにも列に並ぶ必要があり、給水スポットよりも圧倒的に数が多かった自販機で買っても良かったかもしれません。
⑤ 滞在中、通算して4~5時間は並んだでしょうか。
家内は持参の簡易チェアをうまく使って座りながら列に並んでいましたが、立ちっぱなしの私は途中からジワジワと腰のコリを感じ始めました。暑さには慣れてきましたが、腰のコリだけはどうしようもありません。
次回は100均で軽量タイプのものを買って持っていこうと思います。
⑥ イタリア館に始まり、28か国が入っているコモンズA館、カナダ館、クウェート館、フランス館、セルビア館、オーストラリア館、国際機関館の8つのパビリオンをまわることができました。
コモンズA館
期限が切れたパスポートをスタンプカード代わりに使い、ひたすら各国のスタンプを集めました。
カナダ館
入館するとタブレット端末を渡され、それを展示物に向けると拡張現実(AR)の技術を用いてカナダの全10州・3準州が織りなす多様性や創造性、豊かな自然などが画面に映し出されます。
ARが映し出されるたびに、お~!とか、うわっ!とか思わす声が出てしまいました。
クウェート館
事前情報はあてにしないとは言いながらも、事前情報では最上位のSランクでした。
展示の最後、砂漠をイメージした部屋に寝そべり、天井一面に広がる大型スクリーンでクウェートの歴史や将来像を紹介する大音響の映像を楽しみました。

フランス館
アメリカ館と人気を二分するパビリオンです。長蛇の列ができていましたが、よく見ると列はスムーズに流れているではありませんか。ひょっとしたら1時間ぐらいで入れるのではと期待しながら並んでみると、なんと30分程度で入場できました。
これはラッキーでした。イタリア、フランス、アメリカの3大人気パビリオンの2つを制覇!初回にしては上出来です。

セルビア館
お土産にセルビア製のビー玉がもらえるというコアな情報をたよりに訪問しました。
国旗の赤、青、白をイメージした模様が鮮やかなかわいいビー玉を一つ頂きました。
オーストラリア館
森の中を歩き、あっという間に終わった印象です。
国際機関館
並ばなくても入れました。博覧会国際事務局をはじめとする国際機関5つの共同出展でしたが、既に疲れはピークに達しており、展示を見るというよりも、スタンプ集めが目的となっていました。
⑦ ウォーターショーは予約できませんでしたが、開始30分ぐらい前に海に面したあたりを歩いていると、どうやら少し離れた場所から座って観覧できるようで、幸運なことに2人分のスペースを確保することができました。
斜めからでしたが、噴水を使ったスクリーンに映し出された動画と、それに合わせた迫力のある音楽が見事にマッチし、約25分のショーを十分に堪能することができました。

ここで力尽きた私は、家内を残して先に帰ることにしました。
東ゲート横のお土産屋はどのパビリオンよりも混雑していました。気になる商品もあったのですが、今回はあきらめて次回ゆっくりと買い物をしようと思います。
帰宅者の混雑緩和のために、東ゲートを出てから駅まではエントランス広場沿いにぐるりと迂回ルートを歩きます。
途中でドローンショーの様子を遠目に眺めることができました。家内はドローンショーがいかに素晴らしかったかを力説していましたので、これも次回ゆっくりと見たいと思います。
こうして初めての万博はあっという間に終わってしまいました。
会場全体の雰囲気、大屋根リングの迫力、趣向が凝らされたパビリオン。
55年前の「呪縛」からようやく解き放され、万博を心の底から楽しむことができました。
万博に行けずに悔し涙を流した55年前の自分に教えてあげたいです。
「大丈夫、いつかきっと笑顔で行ける日が来るから」
さて、次はいつ行こうかな。今度はアメリカ館に行って月の石を見ようかな。
