サウナの中で動き続けると・・・

あれだけ抜けるような青空の晴天が続いていたのに、さすが私は雨男。「橘湾岸スーパーマラニック273 2021夏のチャレンジ大会」において、8月7日は曇り一時雨、8日は台風接近の影響を受けて曇りのち大雨となり、あまりの雨男ぶりに自分でも怖くなりました。

とはいえ、この時期の雨はむしろ歓迎すべきかもしれません。肌を焦がすような直射日光を受けず、熱を持った身体は雨のおかげで程よく冷却されるのではと、ほのかに期待をしていました。始まるまでは。

話は少しそれますが、スタートの3日前に2回目のワクチン接種を行いました。接種の翌日は朝から37.5度の熱が出て、夕方には38.5度まで上がりましたが、翌朝にはまるで何事もなかったように平熱に下がりました。念のために、レース当日も解熱剤を飲んで万が一に備えましたが、その後、全く副反応は出ておらず、ヤレヤレといったところです。

さて、8月7日19時、いよいよスタートです。このときの長崎市は、気温29.6℃、湿度82%。うんざりするような暑さの中でレースが始まりました。参加者は総勢82人ですが、各人の走力に応じてスタート時間が決められており、その中で一番初めの19時にスタートするアーリースタートの24人は、日没後の薄明かりが残る長崎市江戸町公園を後にしました。出島を一周してカステラで有名な文明堂総本店の横を通って、目指すは標高333mの稲佐山山頂展望台です。

スタートを待つ参加者たち
19時ですが未だ明るいです
スタート前 まだ元気です

過去2回の経験で山頂まで無理して頑張ると、後々足が動かなくなることがわかっていたので、ゆっくりとマイペースで歩いて登ります。長崎の夜景を観ることを心のよりどころにして、黙々と一歩ずつ足を進めましたが、果たして展望台から望む長崎の夜景は想像以上に素晴らしく、暑さを忘れるほど見事なものでした。

絶景!

稲佐山を下りきると、しばらくは市街地の平坦な道が続きますが、その後はアップダウンの繰り返しで、下がる気配のない気温、上がり続ける湿度のダメージが次第に出てき始めました。拭けども拭けども汗が止まらない、夏場の風呂上りのあの嫌な感覚に近く、不快感のメーターは早い段階でMax値を振り切ってしまいました。それもそのはず、後日、7日夜の気象データを確認したところ、湿度は90%を下回ることはなかったようです。

首に巻いたクールタオルや腕に巻いたクールアームカバーは、温いお湯を浸したような状態になってしまい、もはや何の役にも立っておらず、日の出後の日焼けを覚悟して、途中から脱ぎ捨てました。

夜中の3時ごろにはゲリラ豪雨にも会いました。たまたま屋根のあるバス停で休憩していたところ、ポツポツと降り始めた雨が一瞬で滝のような豪雨となりました。

「まさか、ここでレースは終わってしまうのか」

不安に思いながらスマホで雨雲レーダーを見ると、10分もすれば通り過ぎることがわかったので一安心。一緒に休憩していた男女ペアの方は、私の静止を振り切って、豪雨の中をコースに戻っていきました。あの二人はその後どうなったのでしょう。

スタートから45km、あぐりの丘では辺り一面に靄(もや)がかかり、前方数メートルしか見えなくなってしまいました。大気中の水蒸気を維持できなくなって水滴となり、それが空気中に浮かんでいる状態、つまり湿度は100%ということです。ヘッドライトに照らし出された霧状の水滴は、ユラユラと揺らめいて、果たしてこれは現実なのかどうか、一瞬わからなくなるほど幻想的な光景でした。

東の空が薄らと明るくなり始め、いよいよ日の出が近づいてきました。「太陽が出る前に少しでも距離を稼がねば」と焦る気持ちは、まさに滅鬼の刃「無限列車編」の猗窩座になった心境でした。

夜が明ける!! ここは陽光が差す・・・!! 逃げなければ 逃げなければ!! ( 猗窩座っぽく)

8日の日の出は5時40分、スタートから制限時間のほぼ半分の11時間が経過しようとしていますが、進んだ距離は55kmほど。半分の60kmまではたどり着いておきたかったのですが、5kmほど足りず少しだけ焦りを感じました。

6時54分、女神大橋(スタートから64km)に差し掛かった時、電光掲示板に示された温度は27℃。橋の上から眺める橘湾は絶景でしたが、心の中では「頼む、これ以上晴れないでくれ~」と叫んでいました。

逆光で見辛いのですが電光掲示は27℃です
橋の上からの絶景

その後は祈りが通じたのか、空は厚い雲に覆われ、直射日光に苦しむことはありませんでした。ただ、湿度は80%以上をキープしており、前夜のゲリラ豪雨で濡れたアスファルトからの立ち上ってくる蒸気が、これでもかと襲い掛かり、それはまるでサウナにいるような蒸し暑さでした。

スポーツドリンクの甘さに嫌気がさし、途中からは麦茶に切り替えました。ところが、最初は美味しく感じていた麦茶ですら、独特の香ばしさに「ウッ」となる始末、最後はやはり普通の水が一番おいしく感じました。

8時過ぎ、スタートから70kmの江川交差点で一大決心をしました。本来は江川交差点から伊王島にわたり、島の先端の灯台で折り返して103km地点の栄上交差点に戻ってくるのが正規のコースなのですが、10時30分までに江川交差点に間に合わなかった場合、伊王島を省略して栄上交差点までショートカットする「ダッシュコース」というものが設けられています。これは、一人でも多くのランナーに完走の喜びを味わってもらいたいという、主催者の粋な計らいなのでしょう。10時30分までは2時間以上ありましたが、身体の疲れ具合、これからの天候、制限時間内にゴールできるかどうか、あるいはゴール後のシャワーの混雑具合などなど、色々なことを考えてダッシュコースを選ぶことにしました。

大会事務局に連絡したところ、よもやこんな時間にダッシュコースを選ぶランナーがいるとは思わなかったのか、ゴールまでの2か所のエイド設営が間に合わず、それでも良ければダッシュコースを進んでくださいとのことでした。それでも、心配して下さったのか、車で追っかけてくれて、途中でパンやアイスを頂きました。お心遣い、本当にありがとうございました。

こうしてなんとかゴールの「長崎ハウスぶらぶら」にたどり着くことが出来ました。ダッシュコースではありましたが、91kmを17時間30分かけて、無事完走です。ゴール手前1kmあたりから降り始めた雨は、その後、本格的に降り始め、土砂降りとなりました。ゴールには途中リタイヤされた方が何人かいましたが、シャワーも混雑することはなく、ほぼ貸し切り状態で汗を洗い流すことが出来ました。

オリンピックでメダルを取った選手が、インタビューで異口同音に「このような状況で開催して頂いたこと、応援して下さった方々に感謝したいと思います」と応えていたのを思い出しました。

今回のレースを主催して下さったNPO法人ナガサキドラゴンロードジャパンの皆様、本当にこのような状況でレースを開催して頂きありがとうございました。各エイドでサポートして下さったスタッフの皆様、酷暑の中、皆様の手厚いおもてなしに感激しました。

また、遠くから応援して下さったチーム・エモやんのメンバーには、立ち止まりそうになる背中を押していただき、本当にありがとうございました。

ゴール出来たから言えるのだろうけど、楽しかった~。でも、本当に蒸し暑かった~! サウナでしたよ、ほんと。

ゴ~~~ル!!

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