数学教師

今から29年前に 東京工業大学の本川教授が「ゾウの時間 ネズミの時間」という本を書かれ、ベストセラーになりました。この本では「哺乳類はどの動物でも、一生の間に心臓は20億回打ち、ゾウは心拍数が少ないので寿命が長いが、ネズミは心拍数が多いので寿命が短い」ということが書かれています。

また、「スポーツ心臓/スポーツ心臓症候群」という言葉があり、厚生労働省のホームページによると、持久力を要する運動を長期間続けていた競技者などが持つ、通常より大きく肥大した心臓のことをそう呼ぶそうです。

かつては、この心臓の肥大が病的なものであるのかどうかがはっきりしていませんでしたが、現在では心エコー(心臓超音波検査)による検査技術の発達により、スポーツ心臓が健康的な変化であり、競技能力を高めるために身体が適応した結果であることが明らかになっています。

大きな特徴としてあげられるのは心拍数の低下で、1回の拍動で血液をより多く送り出すことができるようになり、少ない拍動でも全身に十分な酸素を運ぶことが可能になるそうです。

さて、ここからが本題です。

先日、会社の健康診断を受けたのですが、心電図を計った際に看護師の方は「あれ~、おかしいなあ」と首をかしげています。再度計測を行うことになったのですが、どうやら二度目の計測後も「?」という表情をされていたので、よくよく聞いてみると、どうやら心拍数がかなり低かったようです。その数字はなんと46回。平均的な成人の脈拍数が1分間に60~80回ですので、それと比べてもかなり低い数字です。

そこで思い出したのが、冒頭の「ゾウの時間 ネズミの時間」と「スポーツ心臓」でした。ランニングを続けているうちに、どうやらスポーツ心臓になった可能性があり、もしそうであるなら普通の人より長生きできるのでは、という素朴な疑問がわいてきました。

ということで、私の寿命を計算してみたいと思います。

以下のような前提条件で、私があと何年生きられるか計算してみて下さい。なお、加齢によりランニングのスピードや距離は低下していきますが、それらは変わらないものと仮定します。また、死ぬ直前まで走り続けるものとします。

ここでポイントとなるのは、「ゾウの時間 ネズミの時間」で書かれていたことを参考に、ランニングを続けた場合と、ランニングをしていない場合の、残りの人生の総脈拍数を等しいとするころにあります。

日本人男性の平均寿命は81歳。ランニングをしていないと平均寿命までしか生きられないと仮定して、果たしてランニングをしてスポーツ心臓になってしまった私は、何年長く生きられるでしょうか。制限時間は10分です。スタート!

いかがだったでしょうか。

回答に至るまでの考え方は以下の通りです。

なんと、ランニングをしない場合に比べて11年も長く生きられることがわかりました。あくまでも計算値ですので、実際はこの通りには行かないとは思いますが、この結果は嬉しく思います。

さて、より現実に近づけるために、加齢によりランニングの距離が年々3%減り、スピードも3%遅くなり、ランニング時の脈拍も(220-年齢)×0.7で計算される通り、年々少なくなっていくという条件を付けるとどうなるでしょうか。高い脈拍数でのランニングが加齢とともに減っていくため、寿命は更に延びることが予想されます。

計算式で導くのは難しそうですので、ここはエクセル君に登場してもらい、表を用いて検証してみたいと思います。

検証結果は下表のとおりで、91歳と92歳の間で残存脈拍数(919,800,000回)を超えることがわかりました。残り寿命は35年+αで先の結果とほぼ同じです。「死ぬまで走り続ける」という条件が効いているか、距離や速さの減少はそれほど影響がなかったようです。

数学(今回のケースは算数か?)の授業は以上です。

中学生のときに、将来は数学の先生になりたいと思っていましたが、まさか41年後にこのような形で実現するとは。

前々回の投稿と同様、15歳の私に教えてあげたいですね。

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