ランニング中毒防止教育動画

2016年執筆のものに一部手を加えました。GW中、やることがないので過去に書いたものを読んでいるときに見つけました。

[庶務からのお知らせ]

最近、ランニング中毒が巷をにぎわしていますが、その防止に向けた研修(動画視聴会)の実施についてご案内します。

【実施日・場所】

○月○日(○)  13時30分~14時00分 (大会議室)

【内容】

  • 動画視聴(約20分)  「罠~トラップ~」
  • アンケート記入(視聴者全員提出)・回収(約5分)

なお、業務上の都合等で参加できない場合には、別途、URLをお伝えしますので、庶務担当までご連絡ください。

動画視聴「罠~トラップ~」

一人の男性が、黙々と走り続けている。

彼の腕時計がアップで映し出される。

「経過距離198km 経過時間28時間35分」

苦痛に顔を歪めながらも、時折、何かを思い出したように笑顔を見せる。

ナレーション(以下「ナ」)

「この男性は、28時間以上走り続けています」

「既に体力の限界を超え、身も心も疲れ切っているにも関わらず、彼は走り続けます」

「重度のランニング中毒です」

「どこにでもいるような平凡なサラリーマンであった彼が、何故ランニング中毒になってしまったのでしょうか」

「些細なことがきっかけでした。それは決して特別なことではなく、誰もが罠に陥る可能性を秘めているのです」

映像は2年前の様子。本屋で熱心に立ち読みをする一人の男性。どこにでもいる、真面目そうな中年男性。ぽっちゃりと出てきたお腹をしきりに気にしている。彼が読んでいるのは「10日間で確実に腹を凹ます」、いわゆるダイエット本である。

男性(以下「男」)

「俺も50になるから、そろそろ健康のことを考えないとなあ。ランニングでも始めようかな」

本を持ってレジに向かう男性。

家でのシーン。

男「お父さんは、明日の誕生日で50歳になる。これを機にランニングを始めるからな」

息子「無理するなよ、おやじ。もう若くないんだから」

男「大丈夫だよ。そんなに長い距離を走る訳じゃないし。健康にはランニングが一番だってこの本にも書いてあるしね」

妻「どうせすぐにやめるんじゃないの」

翌日の早朝。

男「息子にはああいったものの、結構きついな~。初日だし、無理をせずに1キロでやめておこう」

一か月後。

男「ふ~、なんとか10キロ走れるようになったぞ。きついけど、朝走るのって気持ちいいなあ」

会社でのシーン。

後輩社員H(以下「H」)

「先輩、聞きましたよ。最近、走っているそうじゃないですか」

男「軽くジョギングする程度だよ」

H「来月、10キロレースの大会があるんですけど、一緒に出ませんか」

男「おれなんて、遅いから無理だよ。それに、大会に出るのにもお金はいるんだろ」

H「大丈夫ですって。お年寄りや女性も参加していますし、みんな気軽に走ってますよ。参加費だって飲みに行くのに比べたら安いもんですよ。目標があった方が、励みにもなりますしね」

男「そうだなあ。電車で行けるところだし、思い切って出てみようか」

更に4か月後。自宅のパソコンを食い入るように見つめる男。

男「よし、これでエントリーは完了。ホテルの手配を忘れないようにしないとな」

妻「あなた、何やっているの。まさか、またマラソンのレースに出るんじゃないでしょうね」

男「この前のは、10キロだったけど、今度はいよいよ42.195キロのフルマラソンなんだ」

妻「走るのは結構だけど、最近、靴とかウエアが、やたら増えていない?」

男「靴やウエアって重要なんだぞ。いいじゃないか、自分の小遣いで買っているんだし」

妻「この前、テレビでやってたけど、最近、ランニング中毒にかかる中年男性が増えているんですって。あなたも気を付けてよ」

男「大丈夫だって。中毒になるまで走れる訳ないじゃないか」

会社にて。同期入社の友人K(以下「K」)に久しぶりに会う。

K「どうした、そんなに痩せて。変な病気にでもかかったか」

男「ランニングだよ、ランニング。68キロあった体重が今や56キロさ。健康診断の結果も、全て良好だし、いいことずくめさ」

K「そうか、もう若くないんだから無理するなよ」

更に5か月後。泣きながらゴールテープを切る男。

男「やった、やったぞー。100キロを走りきったぞ」

ナ「場所は山梨県の富士五湖。彼にとっての初めてのウルトラマラソンでした」

 「フルマラソンを完走した彼は、もはやその距離では満足できず、走り始めて1年経たないうちに、何と100キロのウルトラマラソンを走りきったのでした」

男「辛かったけど、想像したのより100倍感動した。ウルトラマラソン最高!」

更に3か月後。炎天下の公園周回道路。

ナ「100キロでは満足できなくなった彼は、より強い刺激を求めて、24時間マラソンに手を出してしまったのです」

男「それにしても、なんて暑いんだ。足が痛い。爪も剥がれそうだ。でも、楽しい。気分は最高だ」

ナ「何度か引き返すチャンスはあったのです」

「奥さんや友人の忠告を素直に聞いていれば、こんなことにはならなかったかもしれません」

「彼は、もはや引き返すことができないところまで来てしまいました」

「彼の今の生活はランニング一色です。寝ても覚めてもランニングのことばかり考えています」

「何かを求めて彼は走り続けるのです」

「厚生労働省が2020年に行った調査によると、ランニング中毒にかかる93%は強度のMだそうです」

「勿論、彼もそうです」

冒頭のシーンにもどる。

ナ「彼は今、200キロを超えるスーパーウルトラマラソンに挑戦中です」

 「間もなくゴールです」

 「このレースの後も、彼はより長い距離、より長い時間のレースを走ることでしょう」

 「なぜなら、彼はランニング中毒者だから」

 「次はあなたの番かもしれません」

動画終了。

アンケート記入

 見ているうちに、背筋が寒くなってきました。

 同僚や友人が走っているのを耳にするたびに、ランニングなんて、何が面白いんだ、何が楽しくて走っているんだと思っていました。

 いわんや、ランニング中毒なんて全く別世界のことだと思っていました。

 でも、ささいなきっかけで、誰しも罠に陥る可能性があるんですね。

 大変参考になりました。

5年前、会社で「薬物使用防止教育動画※」を見ながら、こんなパロディを考えていました。

改めて読んでみると、あまりのくだらなさに呆れる反面、ランニングに対する「愛」のようなものを感じます。

さて、初心に返って、今から走りに行くとするか。

※Trap トラップ 「罠」 ~身近に潜む薬物の恐ろしい罠~ (2009年警察庁刑事局作成 現在は配信していません)

一度だけならいいだろうという軽い気持ちで覚せい剤に手を出すOL、遊び感覚でMDMA(合成麻薬の一種)を飲む大学生、気分を高めるため大麻を吸う会社員、そうした彼らの末路はどうなるのでしょうか。この動画は、身近に潜む薬物の「罠」にかかる若者たちの姿を描きだすことで、薬物の「罠」に近づかないよう警告しています。俳優の石丸謙二郎さんが演じる榊教授が、薬物乱用により若者たちがその人生を崩壊させていく姿に訴えます。「「罠」に近づかないことが最大の防御。NO!という勇気が必要です。」と。

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

情報

前の記事

思い込み激しすぎ
情報

次の記事

春合宿終了